ふかし壁とは?メリットデメリットや事例を紹介
普段あまり耳にすることのない「ふかし壁」。
「ふかし壁」と聞いても、具体的にどんなものかイメージしにくい方も多いのではないでしょうか。本来の壁に、さらに壁を追加することで凹凸を付けたものを「ふかし壁」といいますが、この少しの段差が、空間に奥行きや機能性をもたらしてくれます。
今回はそんなふかし壁を事例を用いて説明します。メリットデメリットや、取り入れるのにおすすめの場所などをご紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
「ふかし壁」とは?
「ふかし壁」とは、構造上必要な壁よりも手前に意図的に造り出された壁のことを指します。漢字で書くと「付加し壁」となり、文字通り既存の壁に「付加」された壁という意味合いを持っています。壁の厚みを増すように施工される場合や、既存の構造壁の前面にもう一枚、壁を追加する形で造る場合などがあります。


ニッチとの違い
ふかし壁と似ているのがニッチです。どちらも壁に変化を加えるものですが、造り方が異なります。
ニッチは、壁の内部をくり抜き、くぼみを作ったものを指します。つまり、壁を凹ませることによって造られるものです。廊下やリビングの壁に飾り棚として設けたり、リモコンやスイッチなどをまとめてニッチに収めることで設備機器が壁から出っ張らないようにしたりなどの使い方があります。ニッチは、構造に影響を与えない範囲で壁の厚みを利用して作られるため、比較的小さなスペースであることが多く、装飾的な用途や、ちょっとした小物置きとして利用されます。
一方、ふかし壁は、前述の通り、既存の壁よりも手前に出っ張らせるように新しく造られる壁です。壁を出っ張らせることによって、その手前に奥行きのある空間が生まれます。この出っ張るという点が、壁を凹ませるニッチとの違いです。ふかし壁は、より大きなスペースで凹凸を付けたい場合や、壁の補強など、ニッチよりも大規模な用途で使われることが多いです。


▼ニッチについて説明したコラムはこちら
ふかし壁のメリット
デザイン性が高まる
ふかし壁は、空間に奥行きと陰影をもたらし、単調になりがちな壁面に豊かな表情を与えてくれます。
また、素材や色を変えてアクセントにも。お家のメインでつかっているクロスや漆喰とは異なる素材のをふかし壁に採用することで、そこに自然と視線があつまる特別な空間に変わります。あるいは、間接照明を仕込むことで、柔らかな光が壁面を照らし、落ち着いた雰囲気を演出することも可能です。このように、ふかし壁は、単なる壁ではなく、空間全体のアクセントとして機能し、住まいの個性を際立たせる役割を持っています。

収納を増やすことができる
ふかし壁のもう一つのメリットは、壁の厚みを利用して収納スペースを増やすことができる点です。ふかし壁によって厚さを増した壁の内部に棚を設置することで小物をすっきりと収めることができる壁面収納として活用できます。
また、腰ほどまでの高さのふかし壁は、ちょっとした物を置いておくのに重宝します。ふかし壁は、デッドスペースを有効活用し、日々の暮らしの中で「ここにちょっと収納があれば便利なのに」と感じる小さなストレスを解消してくれます。
ふかし壁のデメリット
空間が狭まる
「ふかし壁」は、既存の壁面よりも手前に出っ張る形で設置されるため、その分、室内の床面積が減ってしまいます。広い空間であれば圧迫感を感じにくいですが、廊下や洗面所、トイレのような比較的狭い空間に設ける場合、その出っ張りによって空間が狭く感じられる可能性があります。
特に、人通りの多い場所や、大きな家具を配置する予定の場所に「ふかし壁」を設ける際は、動線を考慮し、通行の妨げにならないか、家具の配置に支障がないかを十分に確認する必要があります。
ほこりがたまりやすい
ふかし壁を設置することで、壁面に凹凸が生まれるため、その段差の部分にほこりがたまりやすくなるというデメリットがあります。特に、ふかし壁の上部や、間接照明などを仕込んだ窪み部分などは、普段の掃除では見落としがちで、時間とともにほこりが蓄積してしまう可能性があります。定期的にハンディーモップなどでほこりを除去しましょう。
静電気を帯びにくい漆喰の壁は、ほこりが付きにくく、ほこりが付いた時もサッと掃うだけで落とせるのでおすすめです。
おすすめの場所
テレビ周りの壁
リビングの主役となるテレビボードの背面にふかし壁を設けることで、テレビ周りの空間がより際立ち、リビング全体の印象をぐっと引き締めることができます。リビングは広い空間のため圧迫感を感じにくく、むしろ空間に奥行きとリズムが生まれます。
壁掛けテレビの配線も壁内に収めることができるので、すっきりとした見た目になります。

寝室の枕元
スマートフォンや眼鏡、目覚まし時計などを置いておくのに最適なスペースとなります。夜中に喉が渇いた時に、枕元にコップを置く場所としても重宝します。また、間接照明を組み込むことで、柔らかな光で寝室全体を包み込み、落ち着いた雰囲気の中で眠りにつくことができます。コンセントを設置すれば、就寝中にスマートフォンを充電することも可能です。


トイレ
トイレには、給水管や電気配線が設けられていますが、これらがむき出しになっていると、見た目が煩雑になるだけでなく、掃除もしにくくなります。そこで、これらの配線を隠すためにふかし壁を造ることで、トイレ空間がより清潔感のある印象になります。また、配線が隠れることで、ほこりが入りこみにくくなり、日々の掃除が楽になります。
さらに、ふかし壁の上部には、トイレットペーパーのストックや、消臭スプレーなどを置いておくことが可能です。これにより、収納スペースが増え、必要なものがすぐに手の届く場所に整理整頓できます。
ちなみに、配管を通すために造られたふかし壁を「ライニング」と呼びます。

スロップシンク
靴を洗ったり、漬け置きをしたりするのに便利なスロップシンク。スロップシンクは、給水管や排水管などがむき出しになっているためこれらの配管を隠す目的や壁の補強のためにふかし壁を設けることがあります。
さらに、ふかし壁の上部を有効活用することで、洗剤や漂白剤などを置いておける便利なスペースを確保できます。これにより、必要なものがすぐに手に取れるようになり作業効率が向上します。


ふかし壁を取り入れてみてはいかがでしょうか?
ふかし壁は、単なる壁の出っ張りではありません。空間に奥行きとデザイン性をもたらし、収納スペースを増やしたり、配線を隠したりと、多岐にわたる機能性も兼ね備えた、住まいを豊かにする壁です。
空間が狭くなる可能性や、ほこりがたまりやすいといったデメリットも存在します。しかし、これらは適切な計画と、素材選びによって十分にカバーできるものです。
注文住宅だからこそできる壁を使ったアレンジで、他のお家とは異なるオリジナリティーあふれる空間を造ってみてはいかがでしょうか?